わたしはこのスナップに「トタンの楽園」と名前をつけた。
格闘し続ける波型トタンがもうユーモラスの域に達していると思うから。
でも、この家は幸せそうに見えない。
あちこちで見かける古家たちの中には幸せそうに見えるものもあれば
不幸せそうに見えるものもある。
幸せそうなものには、住む人の工夫と愛情が見てとれる。
今も住む人の気持ちが生き生きとしているのがわかる。
一方、この家は静かに朽ちていくのを待っているようだ。
放置されているわけでもなく、少しずつ変化のある家だが
それは絆創膏を貼り付けるような変化であって
わくわくのベクトルが見えない。
ここに静かにあって、次第に老いていくのに任されている。
ノスタルジックな夢を見ている。
採集:杉並区永福